白紙から新しい機械を創造して具現化していくにはどうすればいいのか

 今の時代では3Dデータ、設計図面、機械要素、制御回路、システム、プログラムと便利で参考になる本やネット情報であふれています。知識を持っている人も多く、多くの方々がこの図面やデーターに対して、物言いしたり、手を加えて議論します。でも考えてみてください。出来た形や図面に対して物言いする人は多いですが、いったい誰が何もない白紙の状態からたたき台とも言える形をクリエイトしていくのでしょうか。 何もない状況から、想像力、バランス、コスト、品質などを全てモーラして完成度の高い、「はじめの一歩」のたたき台ともいえる具体的な絵や構想を創造していく人材は非常に少ないものです。

  例えばライン・機械を新しく考えていくプロジェクトの担当になったとします。さて、白紙の状態からどうやって第一歩を踏み出して、企画しアイデアを練っていけばいいのでしょうか。 お客様、工場、生産現場の人達からは、抽象的な話題はたくさん聞こえてきます。個別の専門技術は、本やインターネットで解説がたくさん載っています。しかし、今欲しいのは何もない状態から具体的に形を具現化する手段とアイデアどう進めていくのか、どう着眼していくのかが欲しいのです。 このホームページでは、どのように想像していくのか、アイデアを固めていくのか、また、アイデアが豊富な人間になるためには日ごろどんな訓練をすればいいのか、という面で述べさせていただきます。

  1. 開発は突破力につきる
  2. 事の重大さに気がつかないのが最悪
  3. チャレンジと無謀は紙一重
  4. 3人の困った機械クリエーター 人
  5. 開発の歴史は繰り返していませんか
  6. 95点は取れてると思ったのに、最後の壁は高かった
  7. 常に考えて悩んだら、必ず名案が思い付く
  8. まず製品を知り、ワークになったつもりでライン内を歩け
  9. 網膜シャッター、目で写真を焼き付ける
  10. 構想と設計のスパイラルアップ
  11. 困った4人の設計者
  12. 気づいていなければ致命的大設変、意識あれば80点取れる
  13. 設変3悪  あたる、動かず、組付かず を常に自問自答
  14. 2D的でなく、3D的にユニットを構想する
  15. 頭の中で設備構成を動作させる
  16. 会議の作戦が必要

1.開発は突破力につきる

開発を管理するモノづくりリーダーは、多くの障害を乗り越えねばなりません。特にリーダーや管理的な立場のスタッフは技術課題のことだけでなく、会社や組織に対しての行動が多く発生します。新しいことを始めるときには必ず今を変えたくない人や、余計な行動に手を取られたくない人が反対してきます。これを打ち崩していく活動の源が “突破力”です。圧倒的な推進力とモチベーションで、グイグイと推し進めることが必要です。

2.事の重大さに気がつかないのが最悪

敵を知り、己を知れば、百戦危うからず (孫子より)

 開発的な機械に対して怖いのは、「事の重大さを知らない」 ことであります。

開発物になれている量産ライン会社や組織なら、現実的な開発項目の計画から開始します。生産技術開発では、形が見えるまで1年、機械の評価でさらに1年以上はかかります。

あまり手が届かない基礎技術からはじめる技術開発物件は、想定外の日程と膨大な工数もかかることがあるし、断念する可能性もあります。簡単にお客様に返事をしないことです。一番怖いチャレンジは、怖さを知っていない人、ことの重大さを知らない人であります。

「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」 という言葉をモノづくりで考えてみます。「敵」とは技術的難易度、梯子は外されないか、コンペチターはどうかなどです。これは意外と皆さん意識しているはずです。しかし「己」 を知っているでしょうか。 経営者は本当に自社の実力をわかっていますか。難しさを理解しきれていないと何とかできると思っていませんか。 技術力を有する人材がいますか。経験がない物件だと、事の重大さにも気が付きません。

3. チャレンジと無謀は紙一重

 

 モノづくりの開発にチャレンジするときには「敵を知り、己を知れば、百戦危うべからづ」を心がけて進めてください。敵ちは挑戦すべき技術やテーマ、己とは自組織の実力で、人材やマンパワー、インフラ、投資予算などです。

 例えば、大型のラインを開発しようとした場合に開発技術テーマは複数個出てきます。自組織に担当者が十分にいない状況です。重要部に人を割いて、それ以外の開発については、市場の技術やこれまでの従来技術を転用していきましょう。

4. 3人の困った機械クリエーター

1.開発のハードルが低すぎる人

  思いついたらすぐ出来ると思う人、過去に苦い経験を得たことのない人のことです。形が出来上がったらもう開発が完了したのではないかという気の短い上層部の方々です。開発の怖さをわかっていない人は、頭ですぐに思いついたぐらいで、簡単にできると判断する人です。開発というのは95点は取れた後の量産への導入の5点の山がかなりの壁であります。

2.開発バカの人

  現実の量産工場の中での怖さや、日々の大変さが腹に落ちていない人のことです。「開発馬鹿な人」というのは、量産化の修羅場経験が少なくて、技術的に面白そうなことばかりに夢中になって取り組みます。しかし、実際工場に入れた時の不安定な技術では、とても量産に耐えれないことも多いです。 

3.開発を異常に怖がり、石橋をたたきすぎる人

市場投入の恐ろしさが過去にトラウマになっているのでしょう。市場に出した時の責任の重さを異常に怖がって、慎重になりすぎて動きにスピード感がなくタイミングを逸して、結局ものにならないケースです。 全て危険、リスクがあるという言葉を連発して、勇気を持った意思決定をしないままに時がたち、使用者側やお客さんはドン引きしてしまって、開発者の慎重さに嫌気がさして、話が消えてしまうこともあります。

5. 開発の歴史は繰り返していませんか

人が考え付くことは所詮同じです。着眼は素晴らしいものですが必ず成功するということもなく、工場での実際の量産化まで至らないことが良くあります。しかし、振り返ってみると、実は十数年前に似たようなことを同じ組織や他の部署で実施しようとしていたことが後でわかります。

モノづくりにおいて革新的なことは誰も意外と同じようなことを着眼するものです。当時を知っている古株のメンバーは過去のことをなんとなく知っていたのですが、組織長の勢いに押されて待ったが言い出せなくて開発が開始されます。自分の実力を過信しすぎずに過去や他人の話をよく聞いて、当時とは状況や世の中の技術が進歩しているという確証をつかんで踏み出していくことです。

6. 95点は取れてると思ったのに、最後の壁は高かった

 専用機械の開発は、製品を実際に生産してからロバスト性を評価して確実な品質を確保できているかを見るのに時間がかかります。95点はすでに取れているのに、残りの5点で品質バラツキや異常現象が出てきて原因がわからないことが難解です。

7. 常に考え悩んだら必ず名案が思い付く

  ものづくりクリエイターは、考え抜いてアイディアにたどり着くことが大切です。常に考えて悩んでいたら必ずある時に名案が思いつくものです。ワークと毎日にらめっこをし、旧型製品の生産ラインの前で数時間、あぐらをかいて眺め続けます。現状をしっかり観察し、メモと鉛筆でベストな状態を考え抜きます。

 いつも心にモヤモヤしていると、日常生活でも不意なことから着眼することもあります。例えば、会社へ通勤する途中にひらめいた。 昼休みの息抜きの散歩で難解な設備構成のヒントを着眼した。昼休みに食堂で食べてる途中にうまい言い訳のヒントをつかんだということがよくあります。すぐに絵にしてみる。やはりだめかということも多いが、何回かに1回はヤッタということもあります。

  •  設備構想の着眼点、アイデアのコツ
  •  上からでなく下から、横から、3次元的に斜めから
  •  下を基準に上を決めるから、逆の発想、上向き横向きさかさまではどうか
  •  直線曲線 直線の組み合わせでなく、円、曲線、ならいの軌跡を考える
  •  止まって何かするから、動きながら作業する方法
  •  一つづつから複数同時に、連続的に
  •  前後工程とのつながりから、まとめて実施できないか  後工程に便利なように姿勢変換して次に流す
  •  ハイテクなセンサー、ビジョンが良いとは限らない。 ローテクも保全の人、投資にとっては有利。
  •     ・・・

 

8.まず製品を知り、ワークになったつもりでライン内を歩

 大きな機械やラインを構想していくとき。類似設備を調査に行く時。 ただ漠然と眺めるのではなく、自分がワークになったつもりでラインの中を流れていいってみてください。

 搬送されるときの速度や加減速、ワークチャックの内容、治具で固定されてツールで加工されるときに、支えられるクランプの位置や力、ツールの反力を感じることでしょう。ベテランになるとサイクルタイムの目途もたつようになります。

機械や、設備、ロボットなどを外から見ている限りでは気が付かない、加工されるポイントの場所、加工点から周りの成立性を考えることができます。

9.網膜シャッター、目で写真を焼き付ける

  数少ないタイミングでカメラ持ち込み禁止の現場見学を一瞬許可されたときの訓練です。代表として見に行くエンジニアは、全力で現地を頭に叩き込む必要があります。必要になる訓練の一つが、見たことを頭の中でカメラ写真を撮るように焼き付けて持ち帰ってくることです。ボーっと見学して、その感想だけを自分の組織に帰って口頭説明するのでは駄目です。

「ポンチ絵」を書く技を身に着けることです。これを「網膜シャッター」 と言っています。目で見たことを頭の中でカメラ写真を撮るように焼き付けて持ち帰ってくるのです。

10. 構想と設計のスパイラルアップ

  望むべき機械の姿は、品質確保、生産量が大きく、コンパクト、保全性が良く操作性もよい、投資金額の低いものです。相矛盾する技術や項目をアイデアと創造をしなおしながら、最適な姿にバランスしていく構想作業です。大きな全体の姿をイメージして不成立なところを見直したりしながら繰り返し成立させていくのです。図に示す左側の各マイルストーンは機械を使用する組織の人としっかり打ち合わせする行動です。右側は技術的な構想、設計のスパイラルアップしていく山登りです。

 機械の姿をイメージする過程で、重要部の計算や検討が必要です。上図のスパイラルアップの絵を見てください。 

右側の技術的、設計的な山登り図を説明します。イメージする過程で、システム構成で問題がないか。 次にある程度見えてきたら動作のサイクルを検証して生産量を確保できるサイクルタイムに成立するか。1工程では無理で2工程必要か。重要部位のブラケットやフレームは、ワークを加工、保持するのに要求された精度を確保するに足る構成かどうか。これらをチェックしながら進み上げます。ベテランのエンジニアやセンスの良い設計者などは、いろいろな面から適切に検討して、比較的時間をかけずに70~80点を積み上げて形を決めていけると思います。

左側の各マイルストーンは機械の仕様を使用する組織の人としっかり握る仕様検討、打ち合わせを最初に実施します。右の設計的なスパイラルアップの山登りを行いながら、ほどほどのところで機械の見積もりを出し投資との確認を実施します。おおまかな機械の形が決定したら詳細設計の前に、製作承認という形を使用する側と打ち合わせし、これで製作してもよいかの最終確認を実施します。この段階で使用側とイメージが違うとかの話が多少は出ると思います。 ここはしっかり成立するための理由を説明します。ここで大きくもめるのは最初の入口の打ち合わせが不十分だったケースが多いです。使用する側も機会を考える側も最初の打ち合わせで重要部のイメージと形をしっかり打ち合わせで確認しておくことが大切です。

11.困った4人の設計者

 ものづくりにおいて、特に代表的な機械設計者についてお話しします。ここで紹介したいのは三つのタイプの少し困った設計者についてお話しします。

①.臆病時間消費タイプ

全体をサッとまとめるのがこのフェーズのポイントなのに、やたら細かいクリエイトすべき機械の仕様をお客様や使用する工場の相手方に求める設計者です。そして、構想図の作成はやたら機械要素の細かい点まで全て調べて完璧な構想図と見積もりを作成します。でも、資料ができたときは時すでに遅しで、他の会社や製作部署に依頼がシフトしていました。

②.壁つくりタイプ

自分の範囲はここまでと壁を造りまくって責任を取りたくない行動ばかりの設計者です。自分は個々のユニットのメカ設計が担当と周りを見ずに壁を造ります。自分の都合を周りに変更を求めてばかりです。機械全体のシステム、電気、見積もり、日程は上位の人に文句を言うばかりで何かめんどくさい方です。

③.かかえ込みタイプ

自分で全て構想・調査・見つもりをやろうと頑張ります。他の仕事が飛び込んできて、そちらを先行して時間を取られます。その結果納期を逃すことになります。バランス感覚の優れている方は、人に任せる指示や概要を自分の作業より先行して指示、依頼をして、自分の作業はそのあとに回します。出来ることは先に人に頼んで、自分と強直者が並行作業するように期限に向けて進めるのがベテランです。

④.大局観なしタイプ

 細いところの構想に集中しすぎて、全体がつなぎ合わせになってしまい、全体の絵を見てみると、何かバランスが悪いとか、いびつな形状とかが発生します。全体のイメージから入り込んで、構想がある程度決まって関係部署とかお客様と固めた後に、詳細の構想といったサイクルに入っていくやり方がいいです。「木を見て森を見ず」という言葉があると思いますが、細かいとこが成立するけど全体がおかしい、といったものが出来上がってる傾向の人です。

12.気づいていなければ致命的大設変、意識あれば80点取れる

 構想に行き詰まったら一歩下がってみてみよう。

一つの部分が思うようにいかに時に、そこにどんどん入り込み夢中になると周りを見落とすことがあります。つねに周りを忘れないことです。

剛性、熱の発生や断熱、光を使う機器は外乱に影響されないか、化学物質対応は、騒音は、クリーン対応は、振動する設備が隣にないか。

意外と致命的な前提条件を忘れてしまっていることはないでしょうか。致命的なことに気が付いているだけでもほどほど点数は取れるものです。

13.設変3悪  あたる、動かず、組付かずを常に自問自答

 機械を構想するうえで、特にメカ設計者なら次の3つの言葉を肝に銘じておいてほしいです。「あたる、動かず、組み付かず」です。あたるは、いわゆる干渉する不具合で、ワークの搬送や、ユニットの動作時に他の物とぶつかることがないように設計することです。動かずは、パワー不足やガイドの摺動抵抗が大きかったりして動作不良を起こすことです。組み付かずは、絵で描けてもそれを組み付けていく順番を考えると、入り込まない、芯が合わないといった組付け問題が発生することです。

14.2D的でなく、3D的にユニットを構想する

 機械の構成を考える上でのワンポイントアドバイスです。物を振り込んだり、ブラケットの構成を考えるときは3次元的に考えるとスリムな構想に近づきます。どうしてもXYZ座標で、正面図、平面図、側面図の絵をイメージしがちですが、頭の中で3次元的に考えると部品の振込方法が2モーションが1モーションにできたりします。ブラケットの構造も2部品が、1部品でスリムに構成できることがあります。意外と盲点ですよ。

15.頭の中で設備構成を動作させる

 アイデアを練る時に、考えている機構やユニットを頭の中で三次元的に設備を動かしてみることも必要です。いくつものアイデアをいちいち絵にしたり検証しているじかんはありません。大まかなサイクルタイムを頭の中で計算します。研ぎすましてくると、剛性や慣性力の感覚もみがけます。小さな回転、大きな振込み、スライド、割り出し位置決めなどの動きを普段から観察することで、一動作でどのくらい時間がかかるかがわかるように、頭の中に埋め込んでおく必要があります。ベテランの域になってくると、頭で思いついた機構とか、からくりを頭の中で三次元的に動かすことで、だいたい時間がサイクルがどのくらいかかるかの目処が付きます。 

16.会議の作戦が必要

 モノづくりには多くの会議が発生したり開催したりすることが必要です。一人の考えや、思い付きなど100点はあり得ないし、一人ではできないことばかりです。組織の中では、上司、部下、関係部署、協力会社様などとたくさん実施しながら物事を進めていきます。会議を開催する目的を認識して、会議時間内に結論、決めるべきことを合意させることが重要です。相談や意見を集めるにしてもただ漠然と人を集めても効率は悪いです。

  会議の目的はいろいろありますが、四つほど述べます。会議の決めるべきことに方向付けして、皆を同じ方向に走らせることです。組織間や担当者間の利害を調整して一つにまとめる。良い意見や、考え方を真摯にヒアリングする。自組織の案や考えを会社や他組織に展開して勉強してもらったり、気づかせることで全体のパワーアップを図る。などいろいろ目的はあると思います。この会議の進め方などについては後のテーマで詳しく掲載していきます。

「設備構想の手順」については下記をご覧ください

 ものづくりにおいて、ゼロから形をアイデアを練って、具現化するプロセスについて述べます。ここでは、機械設計方法や電気設計方法については、専門的な技術書、教育関係の講義、ネットの情報により、色々参考にするものは多いと思います。しかし、どれについてもはじめの一歩は何もない状態からアイデアを練って、構想して、モノをクリエイトしていく仕事がスタートであります。このアナログ的という決まった手法が無いアイデア構築の手順書とかプロセス、方法、コツといったことの参考書は少ないです。体系化されたプロセスのマニュアルというより、アイデアや構想力に長けた人材の資質によることが多いと思います。しかし、経験が少ない状況でもプロジェクトリーダーになってしまった人物は一体どこから着手して進めていっていいか心細いと思います。この状況で機械の構想プロセスについて参考になればと思い掲載します。

大手と中小企業で30年以上にわたって自動車のあらゆる生産機械をクリエイトする仕事をしてきました。機械を開発、設計、製作していくそれぞれの組織や立場における事件と行動、白紙からモノを考える技、会議やプレゼン、技術的トラブルについて参考になればと思っています。

One Thought on “機械をクリエイト”

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